「ちくさ、」
犬がこう呼ぶのは 大抵寂しいときで、次の犬の行動は 大体把握済みだ。
「ちく さ 」
予想通りに 傍に寄ってきて、頭を擦り付ける。
小さな頃から変わらない、犬の甘え癖。

「骸さんたち、まだ 帰ってこねぇのかな」
床をじーっと見つめながら、まるで独り言みたいに呟く。
もしかしたら本当に独り言なのかもしれないけれど、俺はそれに律儀に返す。
(だってそうしなきゃ、犬が寂しくて泣くかもしれない)
(・・・そんなことあるはずないのだけれど)

「朝出てったから、もうそろそろ帰ってくるよ」
「う、ん・・」

犬の傷んだ髪を撫でて、犬みたく頬を擦り寄せてみた。
あぁ、これじゃあまるで捨て犬が2匹、寄り添ってるみたい だ。

そう思って、思った途端
あの人の 声とか撫ぜる手、とか が恋しくなった。


早く、はやく 帰ってきてください。
ウサギ、なんかじゃないけれど。
貴方がいないと おれは 死んでしまうかもしれない。



(あぁ、あの人に はやく  早く  抱きしめてほしい)






そう思っていても

今は

寂しいのが 二匹  慰めあうように寄り添うだけ。







**2006.03.03.

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