ごろん、とその場に横になれば周りの音がよく聞こえてくる。

骸は用事が出来たといい数日遠くへ出かけているし、千種は食糧の買出しに出ている。
骸がいない間は只管大人しくしていなければならない。
それは骸が出かける際に犬に『お願い』していったことで、骸の『お願い』は命令と同義であることを感じていた。

床は冷たくジワジワと体温を奪われる感覚がする。
寝返りをうって床に耳を当てても、人の気配も音も聞こえてこない。
聴こえるのは外で振り続ける雨。豪雨。そして雷。
その音は結構近く、あの音を聞くと人恋しくなる自分を感じた。


「あ、」
そういえば。

ふと、朝から見かけていない人間のことを思い出した。


「行ってみますかー」
ぴょんと飛び起き、その人・・ランチアのいる部屋へと向かった。







「チャーちゃーん・・?いますかー??」

コンコン、とドアを叩いても返事はなく、
人の動いてる気配もない。
「おじゃまするれすよー」
ダメもとで回したドアノブはあっさりと動いて、ドアが開く。

「ぁ」

ドアを開けた向こうには座ったまま壁に凭れかかって、
部屋の主が寝ていた。




「チャーちゃーん・・ランチアさーん・・?」

俯いて目を閉じているだけかと思い恐る恐る声を掛けてみるが、
ピクリとも反応せず、かすかな寝息だけが聞こえてくる。


「・・つまんねぇの」

折角自分以外の人を見つけたのに。
その人は寝てて構ってくれないし。それどころか反応もないし。
それでも不眠症気味なことを知ってるから、起こせなくて。
でも外は出るのも躊躇するくらいの雨で遊びに行く気にもならなくて。



「・・・本当つまんない」



起こさないように近付いてクンクンと臭いを嗅いでみる。
人の、生きている人間の臭い・気配を感じたくて堪らなかった。
そっと手を伸ばして触れた頬は柔らかくはないけれど温かかった。


「・・・風邪引いても知らないれすよ」

向かい合わせになって、跨って、その身体にこてんと凭れる。


「毛布代わり、れす」


誰にともなく言い訳するように洩らす。
肌に直に感じる人の体温はすぐに眠気を連れてきた。
すり、と頭を胸に擦り寄せれば脳内は融けるようにまどろみだす。



それは、

その感覚は


とろりとろりと、微温湯に沈んでいくようだと思った。




アナタの体温に融かされたの











今日の天候をネタにしてみた。
そしてまた惰眠ネタ・・orz


**2005.11.29.

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