恭弥はキスが好きだと思う。 学校まで迎えに行って、よぉと声を掛ければ人気のない所に連れ込まれた。 壁際に押し付けられて、睨む様に見据えられて。 次にされる事なんてわかってる。 キス、されるんだ。 身長は俺の方が高いから、胸倉を掴まれ引っ張られる。下から押し上げるように合わされた唇。舌。それは性急な動作で俺の唇を割り、入り込んでくる。そして食べられるのだ。 舌が絡んで、吸われて、甘噛みされて。 俺よりかなり年下のくせに、こういうのがやたら上手くて。 頭の中にいろんなことが浮かんでは消えていった。もう息をするので精一杯になるんだ。立っていられるのが不思議なくらい蹂躙されて、それでも絡んだ舌は離れなくて。 俺からも絡めて吸って噛んで。 顎に唾液が伝っても、気にすることなんて出来なくて。 舌がピリピリ痺れて、それが気持ちよくて、恭弥の腰に腕を回してもっと貪って。 服を掴んでた恭弥の手はいつの間にか俺の頭部を抱え込むようにして在った。 唇が離され、顎を舐められ(唾液を舐め取られたのだろう)、ふぅと一息。 俺は後ろの壁に体重を掛けて、ガクガクしそうな足腰を支えた。 「相変わらず、濃いのすんのな」 息が上がってるとか、もう結構どうでも良くて。 こいつの前で格好悪いのなんていつもだし。 別に格好良い俺でいなくたって、何も代わらないし。 そう思おうとしてる辺りで、まだまだ格好良い自分ってのを演じたいのかと気付いてちょっと凹んでみたり。 「食べられるかと思った」 ぽつりと苦笑混じりに呟けば、食べちゃいたいんだよと返された。 「君の事、食べたいんだ」 愛しいのか切ないのか図れない瞳で、見つめられる。 掠めるようなキスをされて、内心動揺した。 初めての、 触れるだけの。何もしないキスに 動揺した。 「立てる?」 「・・・もうちょっと、待って」 動揺もしたけど欲情もしたさ・・。 恥ずかしくて膝に埋めた顔が、真っ赤だって自分でもわかる。 くすくすと笑う恭弥が恨めしかった。 |